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第14話:「この時期」だから、できること
[2015/05/12]
風薫る五月、この表現が腑に落ちる、なんとも心地いい季節。
先週末は、神田祭の囃子が街中に響いていた。
さて、連休が明け、新入職員にも少しずつゆとりが出始めたころ
この一か月の成長は予定通りであっただろうか。
新人の、具体的に目に見える変化もあるかもしれないが、果たしてどこまで、
自院の業務の意図を理解して、それに取り組めているのか。
彼らの成長度合いに、どの程度の個人差が生じているだろうか。
指導者として、数名の新人教育を任された場合には、
新人1人1人の美点、欠点が目につき始めるころ
まずは、基本となる「あいさつや身だしなみ」
新年度スタート時の、元気な明るい声の挨拶は院内に響いているだろうか
医療者としての、清潔で気の緩みのない身だしなみは、整っているのか
新人の現状は、彼らの接遇に現れている。
そして新人の指導者は、自分の指導力に対しても、内省を始める時期である。
自院の未来を担う人材を育てる、その責務を託された者として、
予定通りに、新人を育てられているだろうか
指導した新人が、クレームを受けたりしていないだろうか
そもそも、自分の言葉はどの程度彼らに届いているのだろうか
計画通りに、新人教育が進行することは望ましいことだが、
実際の現場では、座学だけでなく、専門的な技術や知識も含め、
教えなければならないことが山済みで、気づけば、予定が遅れていることもある。
そこで、自分の指導を、3つの側面から評価してみてはどうだろうか。
1.技術的要素
2.環境的要素
3.人間関係的要素
この3つの要素は、私が医療接遇コンサルティングを依頼される際にベースとしていることだ。
どれか1つでも欠けたら、成果直結に繋がらないといっても差し支えないだろう。
まずは、これまでこのコラムの第11話〜13話で配信してきたように、
指導者自身がこの3つの要素があるかどうかが重要である。
指導者が、「今年の新人は、自院の理想とする医療者に育てよう!」と、気持ちは最高に盛り上がっている。それ自体はとても良いのだが、専門職としての知識や技術を、身に付けていなければ、いざ、現場で適切な患者対応を提供することは難しいわけであって、ましてや、自分の、身につけていないものを、新人に要求することが、酷であることは言うまでもない。
「自分の持っている以上のものを、他人に与えることはできない」のである。
そして、その適切な医療行為には、これまでの経験に基づいた判断力が要求される。
この経験は、これまで自身がどのような環境に携わり、従事してきたか、
すなわち環境的要素が必要となる。
一般的に、多くを経験した人、言い換えれば、
自分にはない物を沢山もっているであろう人からは、学ぶところも多々ある。
新人たちは、そのような経験者たちから、薫陶を受けたいと思うのではないだろうか。
そして、経験というものは、自分自身だけで形成されることは少ない。
経験をする際の、主体が自分であるとすれば、その客体(対象)は何だったであろうか。
医療の現場では、多くの場合、その客体は「人」であろう。
患者様であり、同僚であり、そして自分の指導者でもある。
これが、人間関係的要素が必要となる有縁である。
先日、あるクライアント様先での相談で下記のような内容があった。
前職も医療従事者の中途採用者が1名、前職は異なる業種の新人、そして、大学を出たばかりの社会人1年生が1名、この3名の教育を任されたチームリーダー。
三者三様の背景に、個々に併せた教育方針を立てた
後の2人の方に多く時間を割くことになる、そう彼は予想した。
しかし、一番即戦力になると思っていた、前職も医療従事者だった方の問題が大きくなっている。
なぜ、この新人が思うように育っていないと感じているのか
それは、一言でいうと、経験者だから、という期待値が高かったということだ。
新人教育では、個々の背景によって
指導者側がある種の先入観を持って、教育に当たっている場合が多く見受けられる。
もちろん、過去の経験は有益ではあるが、あくまでも貴院にとっては新人である、ということを忘れがちになる。
これは、以前の病院でもやっているだろう。医療者としては出来ていて当然。と考えて
格段その新人に、高評価をつけることはないものの、時として、新人から、
「前の病院ではこのようにやっていました」と言われたら、
「うちの病院ではそのようなやり方ではない。当院のやり方は…」と言った経験もある指導者も
いるのではないだろうか。
何を主軸に育成するのか。
「自院」という枠に新人を当てはめ、画一的な指導(あくまでこれは「ぶれない」指導とは、別物である)をするのがナンセンスであることは、当然のこととして、
一体どこまで新人の多様性、個別性を受容するべきであろうか。
慣れ始めたこの時期こそ、指導する側は、自分自身、新人その双方の視点で、見直すことが必要である。
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