「本日の診察は終了しました」と言わずに診療を断る技術~「医療DX」と「働き方改革」時代の医療接遇~
以前、ある医事課長から切実な相談を受けました。
「受付時間を過ぎて来院した患者さんに、角を立てずに『お断り』する方法はありませんか?」
当時、私は「断り方を教えることはしません」とお答えしました。そして現在、その考えはさらに強固なものとなっています。
今の時代に求められているのは、単なるマナーとしての「断り方」ではありません。
「デジタルツールの活用」と「働き方改革への理解」を掛け合わせた、患者対応です。
なぜ「断る」スタンスではいけないのか?
患者さんが受付終了間際に駆け込むのには、必ず理由があります。
- 「どうしても今日中に診てほしかった(耐え難い痛み、不安)」
- 「仕事がどうしても抜けられず、今やっと来られた」
- 「受付時間を勘違いしていたが、今すぐ診てほしい」
ここで「もう終わりです」とシャットアウトするのは、医療の役割放棄に繋がりかねません。
一方で、スタッフの過重労働防止や「医師の働き方改革」への対応も、現代経営において避けては通れない課題です。
今、アップデートすべきは「できないことを断るスキル」ではなく、「今できる最善を提案するスキル」です。
伝え方をアップデートする「4つの代替案」
言葉に「仕組み(DX)」を組み込むことで、対応はより誠実なものになります。
① 「時間外のルール」を誠実に開示する
「本日の通常診療は〇時で終了しました。これ以降は時間外診療となり、診察費用の負担(選定療養費や時間外加算等)が変わりますが、本日の受診をご希望されますか?」
【Update Point】
2024年からの労働管理厳格化を背景に、「病院・クリニックの都合」ではなく「医療機関としてのルール」として伝えることで、患者側の納得感を高めます。
② デジタル活用で「安心」を確定させる
「本日の受付は終了しましたが、今この場で明日の予約をお取りしましょうか? 事前にWeb問診をいただければ、明日はお待たせせずにご案内できます」
【Update Point】
「明日また来てください」で終わらせず、その場でDXツール(Web予約・問診)を使い、次回の診療を「予約」という形で確定させます。これが最大の安心材料になります。
③ 地域の医療リソースを「即座に」提示する
「今日は痛みが強いでしょうか? 当院の診察は終了しましたが、今から受診可能な夜間急病センターや、近隣の救急当番医をこちらでお調べしますね」
【Update Point】
自院で完結できなくても、地域の医療連携データを活用して選択肢を示す。「見捨てない」という強いメッセージになります。
④ セルフケア・相談窓口へ繋ぐ
「診察は明日になりますが、それまでの対処法として、看護師による電話相談窓口(#7119など)を利用されるのも一つの方法です」
【Update Point】
自院のスタッフが対応できない領域を、公共リソースで補完します。患者さんの「今、どうすればいいか」という不安に直接応える対応です。
医療DXは「冷たさ」ではなく「余裕」を生むもの
「デジタル化すると接遇が冷たくなる」という声を聞きますが、実は逆です。デジタル化こそが、人にしかできない温かさを生み出します。
・Web問診の活用
受付終了後に、その場で問診だけ入力してもらう。「明朝、医師が内容を確認した状態から始められます」と伝えることで、患者さんは安心感を得られます。
・自動精算機の導入
事務作業を自動化することで、スタッフはより付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。
選ばれる病院・クリニックの条件
- 「断る」ではなく「代案」を示す。
- スタッフを守ることが、結果として患者さんの安全に繋がる。
- DXツールを「おもてなしの道具」として使いこなす。
「あそこの病院は受付時間を過ぎていたのに、親身になって明日の予約や他院の案内をしてくれた」
この評価こそが、選ばれる病院の条件です。
【今日のアクション】この「4コマ漫画」をスタッフに共有する
スタッフの皆さんに「もし今日、受付終了後に患者さんが来たら、この漫画みたいに対応できるかな?」と問いかけてみてください。「断る」のではなく「案内する」という共通意識が、チームに芽生える第一歩になります。
貴院の医療経営のヒントとなりましたら幸甚に存じます。最後までお読みいただきありがとうございます。