患者とスタッフに「選ばれる病院」への処方箋:掃除から始まる意識改革
現代の医療現場において、技術力と同じくらい重要視されている「選ばれる理由」はなんでしょうか。
競合が増える中、患者さんだけでなく、優秀なスタッフからも選ばれ続ける病院・クリニックが求められています。
先日、開業1年目のクリニック院長先生からのご相談です。
「トイレ掃除ができていません。私と副院長がトイレットペーパーの補充をする始末です。スタッフの意識を変えたいのですが、どのように注意したらいいのでしょうか」
"注意したいけど、辞められたら困る"など、このような悩みをお持ちではないでしょうか。
多くの経営者が直面するのが「スタッフがなかなか変わってくれない」という壁です。この課題を突破し、組織を成長させるためのヒントは、日々の「環境整備」に隠されています。
「変わることへの不安」を理解する
スタッフが変化を拒むのは、怠慢だからではありません。人間にとって「変わらないこと」は安心と安全を意味し、「変わること」は不安や面倒を伴うリスクだからです。院長が「課題」や「改善」を訴えても、現場が「今まで通り」を望むのは、心理的な防衛本能とも言えます。
ここで重要なのが、経営側がスタッフと同じ視点に立ち、「協働」の姿勢を見せることです。「選ばれる病院」への第一歩は、トップダウンの命令ではなく、スタッフが最も敬遠しがちな「面倒な仕事」を一緒に行うことから始まります。
環境整備は「医療安全」の最前線
その具体的な手段が「環境整備(掃除)」です。掃除を単なる雑用と捉えるか、それとも「育てる接遇」の訓練と捉えるかで、組織の質は劇的に変わります。
例えば、玄関の傘立ての整理や、床の水滴を拭き取る行為。これは単に見た目を整えるだけでなく、患者さんの転倒リスクを回避する「リスクマネジメント」そのものです。
- 目配り:小さな汚れや水滴に気づく。
- 気配り:それが患者さんに及ぼす影響を想像する。
- 心配り:未然に防ぐために行動する。
この積み重ねが、医療の質を支える「安全への意識」を養います。医療接遇とは、相手を想う心を行動に移すことであり、その究極の形は「患者さんの安全を守ること」に他なりません。
「承認」が育てる、自律するチームへ
スタッフを動かすもう一つの鍵は「言葉」です。変化、成長を求める院長は「問題点・改善・新しいこと」を口にしますが、安定を求めるスタッフは「共通点・今まで通り」を意識しています。この言葉のズレを埋めるのが「承認(認めること)」です。
スタッフが発する言葉に耳を傾け、現在の頑張りをまずは認める。自分たちの役割が「安全な医療」に貢献していると実感できたとき、スタッフは初めて自ら自院が選ばれるために「どうしたらいいのか」と考え、「改善、解決しよう」という意欲を持ちます。
院長とスタッフが同じ方向を向かなければ、理想の接遇は実現しません。まずはスタッフ一人一人の状態を理解し、承認することから育成が始まります。
「選ばれる病院」とは、清潔な環境の中に、細やかな目配りが息づき、スタッフが誇りを持って働いている場所です。
今日からスタッフと一緒に、玄関の傘立てを整えることから始めてみませんか。
床に落ちた水滴に気づき一拭する、その行為が医療安全を強固にし、患者さんからの信頼へとつながる貴院らしい「真の接遇」の始まりに繋がるのではないでしょうか。
貴院の医療経営にお役に立てましたら幸甚に存じます。最後までお読みいただきありがとうございます!