病院で、人が辞めない組織にするには

ラ・ポール株式会社

医療機関で人が辞めない組織にするには

人材が定着するには、どうすればいいのだろう・・・?
以前より、「採用しても採用してもなかなか人材が足りない」そのような声を聞くこともある中、新型コロナウイルスにより、逼迫している医療現場では、人手不足が大きな課題になりました。

ある記事によると、「人は辞めるものと覚悟しておくこと」と書かれた文字に、「納得はしたくないが、そうだな」と思った経験のある、院長先生や人事担当の方はいると思います。

ようやく仕事ができるようになったと思ったとたんに、様々な理由で辞めてしまう現実に、疲れてしまうこともあるかもしれません。


開院時のメンバーが辞めていない医療機関では

一方、ほとんど人材の入れ替わりが少なく、開業時のオープニングメンバーが継続的に働いてもいる医療機関もあります。

この差は、何なのか。このような医療機関では、どのような取り組みをしているのかその1つの事例をご紹介します。

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こちらのクリニックは、地方でありながら、開業時のスタッフがいまだに働いています。
私が2017年にご縁をいただいた時のメンバーは、現在9割働いています。(1割は増員や退職)

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【背景】
開院まもなく40年
事業継承から12年
2回の移転拡大
スタッフ数20名
常勤医師4名
専門領域症例数は、大学病院並み
2017年~現在 医療接遇コンサルティング導入 これまで35回訪問(2022.3現在)
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『一緒に働けて良かった!』というチームづくりがカギ

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一言でいうと、『一緒に働けて良かった!』というチーム作りを徹底しています。
その根源には、院長先生の在り方です。

1.院長先生は、常に「なんのために、このクリニックで働くのか」をスタッフにメッセージをしている
2.主体性を尊重している
3.院長先生は、スタッフに「今日もありがとう」の感謝の言葉を伝え続けている

昨日、新年度を迎えるにあたり、スタッフの皆さんへお話した内容のメールが届きました。
スタッフの皆さんに対して、患者さんに対しての篤い想いが、伝わります。
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・新型コロナウイルス流行が2年以上そして、3年目に突入している。
みんなストレスをもって診療に、仕事に従事していることにとても感謝をしている。

今、このコロナ禍で患者さんも多くきてくれている。
ただ、いろい
ろなストレス、ただでさえ基礎疾患を多く抱えている患者さんが多い中、受診するのはかなりのストレスや心配があるはず。

その中で、我々は医療人として、患者さんを診ている。

医療人として仕事をする以上、コロナウイルスと対峙し、戦っていかなくてはならない。
そして、患者さんを治療していかなくてはな
らない。
医療にたずさわるものとしてはその覚悟はもってもらわないとならない。
どうして我々は医療を続けていくのか、どうして仕事をしていくのか?

・○○医院の基本理念そして廊下に張ってあるポスターをもう一度思い出して欲しい。
なぜみんなが一つの方向を向いて、仕事に取り組まなければならないのか。

患者様そしてその家族の側になって考える医療・サービスを行う:心のある医療を第一に提供する

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ポスターにある
・今日も楽しく働く
・丁寧な説明と信頼できる医療の提供
・仲間を思いやる気持ちが、患者さんの良き医療へつながる

・仲間はいつもみんなを見ていて、勇気づけられたりすることもあるはず。むかつくこともあるはず。でも、誰かのために、みんなのために。

みんなの行動や言動は、その人だけが相手に伝わっているだけではなく、まわりの人にも伝播している。

新人の人たちにとって、これから○○医院の仲間になるに当たって、みんなの行動が一つ一つが影響を与えていること
これらが、楽しく働いていくこと、そうすることで、本当に良い医療を提供できるのではないか。

・仕事をしていく、一生懸命いきていくこと。
これが最終的には自分にとって本当に生きている意味になってくるんじゃないか。
人生はながいようでもあっというまだ。今をいきていくことの大切さを

(補足:このポスターは、スタッフの皆さんで意見を出し合って貼られたものです。院長先生が、指示したことではありません)

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長くなりましたが、もう一度みなが同じ方向を向いて医療に取り組むべき事を話しました。

4月から新しく新人が入ってくるのもあり、我々が一つの方向(○○医院基本理念)に向いていなければならないし、一人でもそれが欠けてしまうと、それが他のスタッフに伝播してしまうことなど心配なところです。

私としては、○○医院で働いていく以上、充実した仕事の日々をおくれるようにしてもらいたいのです。
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という内容でした。

今時、こんな古臭いと思われた方もいらしゃっるかもしれませんが、私達には有難く感情という心があります。

行動や考え方の根本には、心が反映しています。
コロナ禍になったからこそ、今一度、帰属意識を高めるには、想いや考えを言葉にして伝えることではないでしょうか。

"組織は人なり"という言葉があります。
人の入れ替わりが多い時には、何のためだったのか。それを分解する機会なのかもしれません。

働く人が、このクリニックで働けて良かった。充実している。自己実現に一歩近づいた。
その状態が重要だということを、安定した順調なクリニックから学びます。

【今回のコラムのまとめ】
*スタッフが辞めない理由は、どのようなメッセージをしているか
*スタッフが辞めない理由は、自己実現に近づいているか

*スタッフがやりがいを持って、充実した働ける環境を提供しているか

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著作情報

看護師のための 医療安全につながる接遇

【書籍】看護師のための 医療安全につながる接遇~自分と患者を守るコミュニケーション力~

「医療」の評価は「接遇」で決まる!単なるマナーの紹介ではない、「なぜそうするのか」を理解・納得して実践できる新しい接遇の教科書

中央法規出版 書籍紹介ページはこちら

執筆者の紹介

福岡 かつよ(医療接遇コンサルタント)

福岡 かつよ(医療接遇コンサルタント)

厚生労働省の外郭団体に勤務し、医療や介護の現場を対象にしたさまざまな調査研究に携わり、これをきっかけに医療機関における接遇に取り組む。
以降、20年以上にわたり医療介護現場に特化し、接遇を通じて現場を活性化させるべく、10万人を超える医療現場を支える医療者の皆さんと共に、安心・安全な医療環境のために研修・講演を行っている。
「医療接遇のこたえは、現場にある」というのが福岡かつよの長年の信念。
「日本の医療現場を医療接遇で元気にしたい!」その一途で、全てのクライアント様に、福岡かつよ自らが訪問し、講師・コンサルタントを務めている。

著書に「医療安全につながる接遇」など。研修・メディア取材のご依頼はこちら