「育ったら任せる」はもう遅い?2年目スタッフをエースに変え"真のチーム"へ進化させる「抜擢」のタイミング

ラ・ポール株式会社

「まだ任せられるスタッフがいない」
もしそう感じているなら、貴院の成長はそこで止まっているかもしれません。

実は、人が育つのを待ってから役割を与えるのは、もう遅いのです。
ベテラン退職の危機をチャンスに変え、入職わずか2年目の若手を「エース」へと変貌させた、ある院長の決断と「抜擢」の舞台裏に迫ります。

前回は、組織の拡大期において、土台となる「仕組みのアップデート(ハード)」がいかに不可欠であるかをお話ししました。しかし、どれほど精巧な仕組みを整えても、そこに命を吹き込み、現場の価値に変えるのは「人(ソフト)」に他なりません。

後編となる今回は、「育ってから任せる」という常識をあえて手放し、入職わずか2年目のスタッフに大役を託したあるクリニックの事例を紐解きます。
院長が直面した葛藤と、スタッフを劇的に変貌させた「任せる勇気」の本質について深掘りいたします。

「まだ早い」という不安。その裏に潜む盲点

多くの院長先生とお話しする中で、共通して耳にする言葉があります。
・「まだ任せられる人がいない」
・「もっと育ってから役職を与えたい」

一見、スタッフを思いやる慎重な判断に聞こえます。しかし、実はここには、多くのリーダーが見落としがちな「盲点」が潜んでいます。

「スタッフが育つのを待ってから役割を与える」のではなく、「役割を与えるからこそ、スタッフが育つ」。

これこそが、組織成長の真理ではないでしょうか。
「役割」が人を劇的に変える。まずは、その一部始終を描いた漫画をご覧ください。

医院の顔だったベテランの退職。後任は2年目の若手

この事例となった、私の胸を熱くさせたあるクリニックでの出来事をお話しします。

長年現場を支え、いわば「医院の顔」であったベテランスタッフが退職することになりました。その後任として白羽の矢が立ったのは、まだ入職2年目の若手スタッフでした。
正直なところ、最初は院長も本人も不安だったに違いありません。
「彼女にはまだ荷が重いのではないか」「周りの先輩スタッフとのバランスはどうなるのか」。
失敗への懸念や人間関係への配慮など、院長が抱く不安は、彼女への期待と同じくらい大きかったはずです。

レポートの質を劇的に変えた「当事者意識」の芽生え

しかし、彼女に明確な「役割」と「責任」という名の新しい打席を用意した結果、驚くべき変化が起きました。

定期的に行われている研修後のこと、彼女が提出してくれた振り返りレポート。そこには、これまでの彼女からは想像もつかないような「圧倒的な当事者意識」が溢れていたのです。

要点が完璧に整理され、読み手(院長や他スタッフ)への配慮に満ちた極めて明快な内容。そして何より驚いたのは、その提出スピードです。研修の翌日にはすでに院長のデスクに届けられ、私のもとにもメールで送られてきました。

「指示を待つ若手」というこれまでのイメージを根底から覆す、素晴らしいアウトプット。なぜ、彼女はこれほどの力を発揮できたのでしょうか。

それは、役割を与えられたことで、彼女の中に「私は指示を受ける側ではなく、医院を支える一翼を担っているのだ」という強烈な自覚(アイデンティティ)が芽生えたからに他なりません。

「適材適所」は、最初から存在するものではない

経営者やリーダーは、つい「適材適所」をパズルのように、最初から見極めようとしてしまいます。しかし、本当の適材適所とは、最初からそこにあるものではありません。

「まずは信頼して任せてみる」。

その決断によって本人の努力と周りのサポートが噛み合い、後から確立されていくものなのです。

「経験がないから」とチャンスを先延ばしにすることは、スタッフから成長の機会を奪うことでもあります。あえて早い段階で打席に立たせてみる。すると人は、期待に応えようと必死に考え、自らの中に眠っていた強みを引き出し始めます。

・「役割」が人を創る
ポジションがその人の視座を上げ、隠れた才能を呼び覚まします。

・「貢献感」がエンジンになる
「自分の仕事が医院の役に立っている」という実感は、どんな報酬よりも、スタッフの内に秘めた力を力強く引き出します。

「信じて待つ」という、院長にしかできない最大の教育

もちろん、任せることには勇気がいります。失敗するかもしれませんし、最初は時間がかかるかもしれません。しかし、そこで「信じて待つ」ことこそが、院長にしかできない最大の教育です。
1.仕組みを整え、プロとして迷いなく動ける環境を作ること
2.キャリアに関わらず、信頼して「役割」というチャンスを手渡すこと

この両輪が揃ったとき、組織は単なる「雇い・雇われ」の関係を超え、一人ひとりのスタッフが主体的に輝く「真のチーム」へと進化します。

スタッフが「ここで働けてよかった。必要とされて嬉しい」と心の底から思える環境を創ること。人は、自分を信じてくれる組織のために、想像以上の力を発揮するものです。

貴院には、若手が「自ら強みを発揮する」ための、そしてベテランが「後輩へ背中を見せる」ための新しい打席が準備されていますか?

最後までお読みいただきありがとうございます。貴院のご発展にお役に立てましたら幸甚に存じます。